第8章 開闢行動隊
結局、選んだものは“愚策”だった
しかしそれが最善手だと思った
要は爆豪さえ奪還出来ればそれで良い
他の何を犠牲にしても
例えそれが
己自身だとしても…
運良く近くに居たのか
予想より遥かに早い加勢に救われたが
あと少し遅かったら俺は……
「間に合ってよかった
大丈夫!?」
立てるかと問う緑谷の姿は、
俺から見ても良好とは言い難いものだった
「俺より緑谷、お前の方がよっぽど重症だ」
鬱血した手足を見て
苦々しい表情を浮かべる
「轟、爆豪は一緒ではないのか…?」
常闇の疑問に
二人も反応を示す
「…まさか……ッ」
緑谷の察しは早かった
そもそも彼が、爆豪が狙われていると伝播したのだから敏感になっているのは当然か
「悪い、そのまさかだ
気付いたらいなくなってた
一瞬、目を離した隙にだ」
気をつけろ、そう付け足しジリっと戦闘態勢を整える
「気をつけろったって、何をどう…」と障子が汗を流す
駆けつけたばかりの三人にはどちらが爆豪を拐かしたのか、個性は如何様か、何一つ分からないのだから
「敵はこいつら二人じゃない
近くに少なくとももう一人…爆豪を攫った奴がいる」
ざわりと木々が唱和した
轟を凝視していた継ぎ接ぎの青年の
不気味な縫い目が弧を描く