第8章 開闢行動隊
数刻前――…
『…ねえ、死柄木』
「あ?なんだ?」
『私も…作戦に参加するんじゃなかったの…?』
何故今、私はバーでのんびりオレンジジュースを飲んでいるんだ?
「してるさ
何も噓は言ってない」
『いや意味分からんし』
「…たまに出る方言
良いよな
なあ、黒霧」
「……はあ…?」
『…』
もうなんも喋らん
と、一時口を閉ざすが
それでは話が一向に進まないので
しぶしぶ標準語を意識して口を動かす
『…いや、だから
私今、なんでここに居るの?』
一緒に出撃する予定ではなかったの?
「何でって…お前の仕事はもう終わりで、
で、今現在も仕事してるからだな」
『余計に意味が分からない』
今現在も仕事中?オレンジジュース飲むことが?
アンタとのんびり意味の分からない言葉遊びをすることが?
何が仕事なんだ?
「…要は、神奈さん
貴方から血を少々頂きましたね?」
『?
…ええ、そうね
強いて言わせてもらえば
あの量を”少々”と呼ぶのは
いささか疑問ではあるけどね?』
「…はは」
誤魔化し笑いをする黒霧だが
神奈の少々の厭味を躱し
言葉を続けて解説をする
「あれが貴方の今回の仕事です」
『採血が?』
怪訝な顔をする神奈だが
その一言でやっと
なんとなく状況を掴んだらしい
『…つまり、私の血を使って
何か良からぬ事をしてるのね?』
例えば実験とか、個性の発動条件とか
「まあ、そんなところだな」
隣で悠長にジンジャーエールをカラカラと回す死柄木が
呑気に答える
『……まあいい。そっちは分かった
でももう一方は?今はホントに何もしてないわよ』
「ええ、貴方はしてませんが
もう一人の貴方は仕事中です」
『いつの間にクローンを作ってたのよ』
さっきの血で作ったのか?
気味が悪いからやめて欲しいホントに
「いえ、クローンでは…
個性で、と言えば分かりますよね?」
…ああ、嫌でも分かる
寧ろそっちの方がこの時代じゃ現実的だ
つまり
対象の「血」の摂取が必要な
「変身」の個性――…
『…ホント、勝手なことばっか
やってくれるわね』