第8章 開闢行動隊
雄英体育祭の放映を受け〈爆豪勝己〉という少年の勧誘を先生から提案された
そしてその男の情報も知らされた
その中には神奈の名前が
数多く存在した
学生の恋愛事情なんざ一番どうでもいい鬱陶しい事柄だが
その情報だけは群を抜いた鬱陶しさを孕んでいた
先生は俺がどんな感情で神奈と接しているか分かっている
言わずとも悟られている
だからわざわざそんなことを言ったんだろうな
――…神奈を抱く手に力がこもる
想像するだけで胸糞悪い
こいつは
俺のものだ
俺だけの――…
『痛いんだけど』
身じろぎ逃げようとする神奈を
逃がすまいと肩に顔をうずめ密着する
これは作戦だ
これ以上私情を挟むな
幾度となく自身を律してきた言葉だ
「神奈…
お前はただの餌だ
迅速に、確実にゲームをクリアさせる為のお助けキャラなんだよ」
『…』
お前は居るだけで良いんだ
何も知る必要はない
ここに居るだけで
俺の側に、居るだけで……
『大丈夫…?』
「!」
耳元でか細い声がした
あぁ、大丈夫、か…
神奈ちゃんらしい正義ぶった台詞だよな
俺はさ
そんなお前が大っ嫌いでさ
そんなお前が
愛おしいんだよ
どう足掻いても、卑怯な手を使っても
あんたの心情は
ヴィランのそれに寄ることは
絶対に無いんだろうな
「神奈…
俺から離れるなよ」
切な願いを零しても
彼女を抱く腕の力は
緩むことはなかった