第8章 開闢行動隊
数時間前――…
「神奈」
無造作に呼ばれた名に少女は首を向ける
「今回の作戦、お前にも参加してもらう」
『…はい?』
死柄木から発せられた言葉は
思いもよらないものだったため
思わず素っ頓狂な声が喉から落ちる
『…え、今回は新入り達だけでやるんだって
言ってなかった?』
そもそも雄英生徒も先生も、そしてプロヒーローも居る場所に
私を投入するのは、あまりにも悪手ではないか
それに作戦の内容だって
私にだけ概要しか聞かさなかったばかりなのに
言っていることに矛盾がありすぎて
訳が分からない
「賢い頭で考えても分んないか?」
死柄木がにやにやと嫌味を放つ
『…いいからちゃんと説明して』
「あぁ、珍しく気が急いてんな
まさか、あわよくばプロヒーローとの接触をと
思ってんのか?」
『思ってないわよ
そんなミーハーに見える?』
「顔が少し強張ったぜ?」
『うるさいな鬱陶しい』
違う
思っていなくなんてない
本当は期待したんだ
プロヒーローに接触出来ることを
心の底から
ミーハー云々と意識を逸らそうと放ったが意味はなかったが
もし接触が叶うなら
翔を…
彼を救えるかも知れないから
彼が誰かを傷つける前に…
誰かを殺めなければいけなくなる前に…
彼を強制的に保護してもらえれば
「爆豪勝己」
『…え?』
ほくそ笑む口角を降ろし
ぼそりを零した言葉は
胸の奥底へと響き渡るような
心地の良いものだった