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【ヒロアカ】世も縋ら

第8章 開闢行動隊




茶色がかった黒髪は
例の如く纏め上げられ

銀に輝くかんざしが
はらはらと零れ落ちるのを塞き止める

後の団子に届かなかった横髪は
重力に従って真っ直ぐ落ち
少女が気だるげにカウンターテーブルに突っ伏すと
それらも少女の感情に呼応するよう
気だるげに木目を滑る


薄っすらと開かれた薄い唇は

薄く笑って、薄い嘘を吐き落とす


『…仲間が増えて、良かったね』


少女の細めた瞳は妖しげで

それは彼女がこちら側に近づいた事を示唆しているのか

はたまたその逆か

今は未だ

はかれずにいる



…あぁ、死柄木



なんて面倒なものを
愛してしまったのか



そう嘆かずには
いられなかった




そんな二人の異様な空気を
新鋭達は理解も出来ず

ただ小言を挟みながら
値踏みする


継ぎ接ぎの青年、荼毘は
突如現れた美しく、凛々しい少女を
ジッと見据える


報道どおりの個性なら
敵連合の布陣は一気に盤石なものになる

この女一人の存在で


気色ワリィあいつの返答はまだだが
加入を決意した俺の考えは
強ち外れではなかっただろうと
確信めいたものを感じさせる



治癒系個性がいるだけで
少しの無茶無謀も決行できる

しかし

どうも不自然でならない



そもそもこの女は攫われてここに居るはず

なら、何故こんな野放し状態なんだ?

そう簡単に心変わりするような女にも思えねえし
だとするなら、まだ何か
この女をここに縛る何かがー…


『…翔は?』


「!」


未だ聞き知らぬ名前が女の口から出、ピクリと反応してしまう


「…彼は今、別の仕事で外しております
今日はこちらにはいらっしゃらないかと」

『そっか』


あいもかわらず退屈そうに告げた言葉
神奈と呼ばれる少女は黒霧にりんごジュースと告げると
脚をブラブラと振り子のように振りながら
扉を眺め、誰かの帰りを待っている様子


…敵連合


もしかすれば案外
一枚岩じゃねえのかもな


一人の少女の存在


そこから生まれるのは期待と、懸念とー…


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