第8章 開闢行動隊
静寂の中
ザッザッザッと土踏む音が鳴り響く
音は大小様々で
個々人の体躯や性格を表すようだ
闇に蠢く彼等のことを紹介するには
少し時間を遡るーー…
雄英期末試験が終わりを迎えたその時期
死柄木弔の元に
まず二人
ブローカーに連れられて
地下のバーへと現れたのが始まりだ
「私も入れてよ!
敵連合!」
無邪気に放たれたその言葉に
死柄木が簡単に頷くことは無かった
「……黒霧、こいつらトバせ
俺の大嫌いなもんがセットで来やがった」
苛つきのこもった低い声で
前に佇む二人を指差す
「餓鬼」と言われた少女は先の無邪気な声の主で、その表情仕草は、話し方から安易に想像のつくものだ
少女の名前はトガヒミコ
団子に結んだ二つの束から
まばらに髪が散っていて
セーラー姿でポッケからはみ出る大量のケータイストラップから
女子高生らしさを感じられる
しかし其の実、少女の正体はその可愛らしい表面から想像もつかない
連続失血死事件の容疑者であった
そしてもう一人
「礼儀知らず」と揶揄された青年は、自身を荼毘と名乗り
顔は継ぎ接ぎで全身真っ黒
少女と打って変わり落ち着いた雰囲気を纏っている
二人が訪れた理由
それはヒーロー殺しに起因する
敵連合が逮捕されたヒーロー殺しの仲間と知り、かの意思を継ぐべく、かの人への憧れ故に、加入を申し込む
が
そんな二人に対し死柄木が取った行動は
八つ当たりや考え無しと思われる類のものだった
どいつもこいつもステインステイン……
何が結果を分けたんだ?
何が俺とアイツで違ってた?
何が…
何が……
苛立ちをぶつけるように差し出した手は
黒霧の個性で二人に触れることを阻止された
組織拡大を望むなら
排斥ではなく受容を…
そんな黒霧の助言に
顔に貼り付けた手に隠れた口を強く結び
やり切れなさを扉にぶつけるようにして外へ行く
その音に反応してか
反対に位置する扉が
少し遠慮がちに開かれた