第8章 開闢行動隊
話していると
気付かないもので
あんなにも煩かったいびき声は
そのほとんどが音を止めていた
そして代わりに
ひくつくようなすすり泣く音が
遠慮がちに聞こえてきた
「……チッ」
その声に気付いた爆豪は
盛大な舌打ちを鳴らし
身体をゴロンと傾ける
轟は軽く首を回し周囲を見ると
布団に埋もれる出っ張りは
爆豪に背を向けるよう、震えていた
「…ふ」
皆一様に、声こそ掛けぬが
想いは一つに纏まった
彼女の助けになりたい
それが彼女のためであり
友人のためでもあると思った
神奈と爆豪の関係を
周囲で見ていた奴ならば
力になりたいと思わない方が難しい
とどめにお前のさっきの言葉…
やっぱりお前らは
二人で一つで眩しいんだな
天井を仰ぎ見て
ゆっくりと手を伸ばす
届きそうに見えたそれは
実際は遥か高く、先にあり
指先すら掠ることも叶わない
それでもぐっと
堪えて、目を背けず、ひたすらに追いかけることが出来たなら
その時こそは
触れる事くらいは
叶うのだろうか…
「神奈…」
音にもならない程の声で囁けば
困ったように笑う彼女の姿が脳裏を過る
ああ
卑怯な手を使ってでも
必ず掴んでやる
ひゅううと風が過ぎ去って
窓を激しく叩き行く
雲隠れ
彼等の決意を試すよう
山の向こう
新たな敵が揃い踏み
そして悪意は
不敵に嗤う