第8章 開闢行動隊
なぜ神奈を泣かせてる?
なぜお前が安易に触れる?
彼女の側に立つ人間が
自分でない事が
こんなにも腹立たしいものだとは…
いや、そんな事より不安なことは
彼女の未来だ
今現在、マスメディアで彼女はどの様に報道されているか
それはヴィランになった哀れな少女だ
神奈が死柄木の傷を個性で治したのは映像での死柄木の機微から推測出来た
それを行なったのは時期的にみても十中八九彼女だろう
もし
ヴィランの一員として報道されていた彼女が
再びヒーローの卵として活動し出したとする
残酷な話
全幅の信頼を向けられる者が
果たして何割いるだろうか
勿論彼女を助け出したい気持ちに揺らぎはねえ
だが、彼女の将来を思うと
ただただ悔しくて仕方ねえ
こんな事になっていなければ
神奈は将来
多くの患者を救うヒーローになっていたはずだった
多くの人を護るヒーローになっていたはずだった
多くの人が必要とするヒーローになっていたはずだった…
リスクを伴う彼女の個性
そのリスクをもカバーする彼女への信頼
それが当たり前にあるはずだった…
「…なあ、爆豪」
吐く息が震える
出た音は想定よりはるかに小さい
まるで
「あいつを…
助けてえと思うのは
傲慢か…?」
自身の情け無さを
表出するようだ