第8章 開闢行動隊
―【相澤】―
流れる湯を避けることもなく
足を濡らして目を瞑る
薄く瞼を開いては
地面を見つめる
少し厳しいことを言い過ぎたかと省みて
いや、これで良かった、と再確認する
こいつには、ちゃんと言わねえと意味がねえ
あやふやに躱し
欲しがる言葉を与えてやるのは簡単だ
だがそれは
相手を馬鹿にする行為と同等
俺の立場でするべきことではない
溜息をまた吐きながら
こめかみをギュッと潰し
それ以上は何も言わずに踵を返す
あいつがなりふり構わず凪山を探し出そうとすれば
やもすれば見つけることはできるかも知れない
だが見つけた先は?
またなりふり構わず奪還しようとすれば?
当然それには個性の使用が必須だろう
そうなればあいつの将来はそこで大きく躓くだろう
たとえ望みを叶えたとしても…
あいつにこんな心配をすることこそ
侮辱的行為かも知れねえが
こと凪山の事となれば
下手に動くかもしれねえ奴が数名いる
何が彼らをそうさせるのか
俺には理解は出来ないが
理解出来なくとも予測は出来る
俺はただ
最悪の事態にならないよう
歯止めを教えてやる
少しでも
少しでもあいつらを……