第7章 敵連合
夕刻が近づくにつれ
二人の目配せが増えていき
黒霧さんが一度席を外し
戻ってきた時
「死柄木、そろそろ…」
「おいおいやっとかよ」
はあ、と態とらしく大きな溜息をつき
視線をこちらに流す
「…神奈、あっちの部屋行ってろ」
『離れちゃダメなんじゃなかったっけ?』
小馬鹿にするように返せば
また同じ様に息を吐き
「おいたしたら、分かるから」
そう、いつも存在するだけのモニターを指して言う
あれは監視カメラのモニターとかだったのか
下手に行動しなくて正解だったな
『…あっそう
じゃあ私は向こうの冷たい部屋で
冷たい床にでも大人しく座りながら
アンタを出し抜く方法でも考えてるわ』
「…おい何拗ねてんだよ
そんなに俺と離れたくないのか?」
『んなわけ無いでしょ』
冷めた目と口調でべっと舌を突き出し
戸を閉め遮断する
向こうから未だ何か
死柄木がごちゃごちゃ言ってるのが聞こえるけど知らないふりでもしておこう
『…はあ
どうしよう』
一体誰がこんな処に訪問するのか
まあバー自体は綺麗で洒落ているが
居座る人間はその真逆だ
何か、知られてはまずい取引相手が来るのか
学生一人が思考を巡らせたところで
答えが出る様な問題でもなく
早々に諦め、
壁にもたれかかる形で
煉瓦の向こうの会話に
耳を傾ける
「ああ頼むよ
悪党の大先輩」
死柄木の声だ
「…………目的は何だ」
『?』
聞き覚えのない声
訪問者か
複数人の気配も無いし
先程の死柄木の発言からも
訪れた人は単独か
それに近い人数か
「とりあえずはオールマイトをブッ殺したい
気に入らないものは全部
壊したいな
こういう…
糞餓鬼とかもさ…
全部」
こういう…?
私の事か…?
「興味を持った俺が浅はかだった…
おまえは……ハァ…
俺が最も嫌悪する人種だ」
「はあ?」
『!』
どうやら交渉は決裂したようだ
「子どもの癇癪に付き合えと?ハ……ハァ
信念なき殺意に
何の意義がある」
壁越しに声を聞くだけでも
背筋が凍った
そんな
低く熱い
貫ぬくような声だった