第7章 敵連合
それからというものの
どこかしこりを残したまま
死柄木の我儘に振り回されながら
日々を過ごした
私が警戒していたよりずっと
なんだか拍子抜けしちゃうくらい
平穏に近い時間だった
まあでも
毎日犯罪者の家に帰り
ソファーの上で膝掛けを肩までひっぱり
就寝し
そして何故か
朝になると犯罪者のベッドの中に
後ろから抱きしめられる形で目が覚めるという…
これを平穏と呼べるのか
非日常が日常と化してきてしまった今日
いつものドアをガチャリと開けて
まだ少し眠気の残る死柄木の背中を追って
バーへと入る
「おはようございます、死柄木、神奈さん」
「…」
『…おはよう黒霧さん』
よく毎日返ってこない挨拶をこなせるなと
敵ながら少し感心する
例の如くモニター近くの椅子に腰を下ろす死柄木に
慣れたようにその隣の空いた席によっと少し跳ねるように座る
この椅子、私にはちょっと座高が高くて
最初はこの姿を死柄木に笑われたりもしたが
二度目以降は見慣れたもんだと流してくれた
二人が着座したのを確認し
黒霧はスッと
長身のシンプルなガラスコップに適量入った水を出してくる
「死柄木、今日は……」
「ああ、分かってるよ
だからこんな朝から此処に座ってんだろうが」
『…?』
最近よくある
二人だけで会話を成立させるこれ
確か、誰かとコンタクトが取れたとか
そんな事を昨日言っていた気がする
その肝心の“誰か”は
私にはまるで教えてはくれなかった
『…』
「なんだ神奈ちゃん
物欲しそうな顔して」
『してないわよ
目、おかしいんじゃないの』
「相変わらず一言多いな
素直に訊きゃいいのにさ」
『訊いたら教えてくれるの?』
「なわけねーだろ」
『…』
コイツとの会話は
時間の浪費だわ