第7章 敵連合
嘘をつかれた
黒霧の個性はきっと
黒い霧だけではない
実際に目の前で動かして見せてくれたのが何よりも怪しさを増した
だってその仕草はまるで
何かを悟らせないために
必要最低限の情報だけを見せて納得させようとする
そんな意思を孕んでいたから
彼の個性が鍵になる
この状況を打破したければ
まずは彼の個性を把握しなければ
きっと何をやっても失敗する
嘘をつかれたということは
私の意図は知られたはず
ならきっと
そう易々とは教えてくれない
これは想像以上に
時間がかかるかもしれない…
そう思った途端に
胸の奥からぶわっと
寂しさが溢れ出してきた
なんだこれ
なんか
なんだか
身体の一部を何処かに置いてきたような
そんな感覚
何か大事なものを失ったような
そんな……
気付けば頬を
一筋の雫が伝って落ちる
「大丈夫か?神奈」
顔を上げればすぐ前に
離れて座っていたはずの死柄木がいて
溢れる涙を四指で優しく拭う
これじゃない
『っ……
なんでもない…!』
グイとその手を退け
強く目をこすり現実に戻る
「…あっそ」
死柄木は、まだ自分に一切心を許してくれない神奈に
虚しさと苛立ちを覚えた
『……』
これじゃない、って…
私は消された半年間で
一体何を
得ていたんだろう
こんなにも涙が溢れてくるほどの
大切な何かは
一体どんな……
ああ
必ず記憶を取り戻そう