第7章 敵連合
翌朝
世間を賑わせたのは
体育祭の余波ではなく
一人の少女の
失踪事件だった
事件の被害者となった少女の名前は凪山神奈
彼女はかの名門校、雄英高校に通う
一学徒に過ぎなかった
彼女は昨日執り行われた雄英体育祭にも出場しており、
予選、そして初戦も勝ち進む程の実力者…
にも関わらず、午後の部からは姿を消し、そのまま棄権とされていた
それは彼女が
まさにその直前に
敵連合に拐かされていたからだった
それを裏付ける証言が、警察の調査で幾つか浮上
証言によれば、彼女は午後の部が始まる直前に
同じ年頃の男性に、腕を引かれる状態で校門をくぐっていったとの事で
目撃情報はそれが最後
その後の彼女の行方を知る者はいない
何故、少女は誘拐されたのか
それは体育祭での映像を見るだけでも十分に予測出来る様な
そんな稀有な個性の持ち主だったからだろう
彼女の個性
それは
「復元」
その個性はどんなものをも、どれ程でも復元出来るという
夢の様な個性だった
個性学者の教授によれば
その個性の汎用性は果てしなく広く
使い様によっては、都市伝説とまで言われて来た「不死」、そのような存在にもなれ
そして、そのような存在をも作ることが出来ると教授は予想した
そして彼女は
その強大な個性をコントロールすべく
妙齢ヒロイン、リカバリーガールの元に師事を仰ぎ
授業の合間を縫い、医療活動の勉学にも励んでいたそうだ
たったこれだけの情報でも
少女の個性を必要としない者など
いないと言うことは明白であろう
そしてそれは
市民やヒーローに限らず
敵にも言えることだと言うこともまた
明白ではないだろうか
雄英高校という
数々のヒーローを輩出して来た当校には
彼女の他にも、稀有で強大な個性の子どもは数多と在籍している
それにも関わらず、今回のような事件が起きてしまったことは
少なくとも
雄英高校の配慮の至らなさ
また、セキュリティ設備の不十分さが
見て取れたのではないだろうか
今後当局は
彼女の行方を捜索しつつ
事件の被害者を出してしまった雄英高校への
問題提起と解決を図るそうだ