第7章 敵連合
人の少ない小道を通り
いくつかの信号の無い交差点を通り過ぎ
細い細い裏路地へと入って行った
すると
ピタリと立ち止まり
ゆっくりとこちらを振り返る
「…ここまで来たら、邪魔は入らない」
『……』
翔の行動は明らかに怪しい
けど
さっきの言葉で
信じきると決めた
貴方の動かない腕の罪滅ぼしを
今からさせてくれますか
「案外大人しく付いて来てくれたね
僕としては手間が省けて助かるんだけど
これから起こることが良いことだなんて
思ってないよね?」
『…うん』
もちろん
なにが起こっても
それは全て私の不甲斐なさが招いた結末だから
「神奈は覚えてるかな…
あの事件の日のこと」
私の手を解放し
冷たい壁に背中を預け
語りかけてくる
「あの日以降、この通り
腕は使い物にならなくなった
どれだけ設備の整った場所に行っても
個性も、最先端の技術も
何もかも無意味な抵抗だったよ」
『っ……』
「別に神奈を責めるつもりは無かったんだ
当時の僕は、君のことを
何より大事に思ってたから」
それは私も…
「でも、僕は思ったより
強い人間じゃなくてね
誰かのせいにしないと
心がもう持たなかったんだ…」
そう言って悲しそうに笑う翔に
私の心は悲鳴を上げる
『誰かのせいにとか…そういうんじゃないよ、翔
違うの
全部、私が
弱かったから』
弱かったから、招いたことだ
「…神奈」
数年ぶりに向き合い
幼馴染の顔を見る
大人びたその姿に
もう手遅れなんだと再認識する
「今から起こること、許して欲しい」
そう、彼が零したその瞬間
私の身体は
黒い霧に包まれる