第7章 敵連合
『えっちょっと、そんなに来られても…!』
「っ神奈!」
焦凍くんが咄嗟に私の前に立ちはだかり
患者が押し寄せるのを止めようとしてくれる
「落ち着け…!」
そう制止の声を掛けるが、興奮した彼らには届かず
押し潰されそうになる
「皆!落ち着こう!!」
足元から元気な声がし
周囲が冷静さを取り戻す
声のした方へ視線を向ければ
そこには地面から顔だけ出した
チャーミングな顔をした人がいた
「後輩くんを困らせちゃいけないからね!」
はははっと快活に笑う通形に
神奈は初めての光景に、ただただ言葉を失っていた
結局
その人のおかげで事態は収拾し
一人一人の診察と治療を終えた私は
水分不足でばたりと地面に寝っ転がっていた
「ん」
そのぶっきら棒な声と一緒に
焦凍くんはスポーツドリンクを渡してくれ、
『ありがとう』と弱々しくも言いながら
喉の奥へと流し込み、ふうと一息つく
「お疲れ」
フッと笑いながら労ってくれる彼は
やっぱり食堂で会った時と同じ
王子様みたいな人だった
『何にイラついてたのか知らないけど
あんな怪我、もうしないでね…?』
「……ああ…悪かった」
『ううん、私に謝らないで
そうじゃなくてさ、ほら
焦凍くんが怪我したら、悲しむ人いるんだから』
「!」
『少なくとも私は、友達があんな怪我してたら
悲しくなっちゃうよ』
なんだか綺麗事くさくなってしまったけど
でも本心だから
「……お前は純粋に
俺の心配してくれんだな」
轟は神奈の優しさに
少し顔をほころばせてしまった