第7章 敵連合
こちらに来た患者らは
我先にと他を押しのける者もおり
天下の雄英高校ながら
少し呆れる
『怪我の具合を診て、こちらで順序を決めさせてもらいます
押し合わず、ジッとして下さい』
先輩も同級生も
そんなの構わずキッと睨むと
周囲はそれに威圧されてか
急に押し黙る
「かっこいいねあの子!」
人垣の向こうで天喰と通形が神奈を観察し始める
「…人前であんな堂々と……俺には無理だ」
「個性何だろうね!」
「……見ていくか?」
「ああ!!」
人ごみから早く出てしまいたかった天喰だが
ミリオがこうなってしまっては…
半ば諦めた状態でここに留まることにした
ふう、と一息つき
一人一人テキパキと診ていく
そんな中
一人、見知った顔が居た
『…焦凍君?』
「わりい、俺は大した怪我じゃねえから
最後でいい」
そういう彼だが
その右手からはダラダラと血が滴っていた
『ちょっ!出血してんのに何言ってんの!?』
「痛くねえ」
『そういう問題じゃないの!ああもう…どれくらい前のケガ?』
痛々しく腫れ上がってる…
騎馬戦でこんなケガしたのか
「数分前……壁殴ったらこうなった」
『どんだけの力で殴ったらこうなんのよ』
クールそうな見た目に反して
なんて天然なんだろうか
食堂で初めて会った時の様な
王子様的印象とは、段々と離れていく
『…はあ、思ったより人間らしい人だね、焦凍くん』
「…は?」
困惑した顔を浮かべる彼だが
それすらも可愛らしく思えてしまう
『いや、気にしないで。会う度に親近感が湧いてくるねって意味だよ』
「……」
少し揶揄われていると感じた彼は
一層眉を寄せていた
『後ろも押してるし、ちゃちゃっと復元するから
手、舐めても良い?』
嫌ならリカバリーガールの方に行ってもらわないとだけど
「構わない」
『そう、了解!』
その返事を聞くやいなや
彼の手へと舌を這わす
「っ……」
みるみるうちに彼の手は元の肌色を取り戻す
『よしっ』
そう満足していると
「すげえ…傷口すら塞がってる」
「なんて個性なの!?」
「手が元に戻ってる…!」
周囲からその奇跡に驚愕する声が漏れだす
するとそれを見ていた師匠の患者らも
こぞってこちらに来ようとして来た