第6章 体育祭
目を瞑ったまま
困ったような
今にも泣き出しそうな
そんな表情をする彼女を
俺はただ黙って待っていた
時間が止まっているようにすら
錯覚してしまうほど
刹那の時が辛かった
早く
早く答えを…
気持ちばかり急いてしまう
「……神奈」
言葉を発するだけで
口先は触れてしまいそうな距離なのに
「…なあ」
もう十分待ったよな?
もういいよな…?
そう言い聞かせ、何度も感じてきたその柔い存在を
確かめようとした
その時
ずっと堅く瞑っていた彼女の瞼が
薄っすらと日の出を見せる
「っ」
視線を交わせながら
また少しずつ近づいてみせれば
まるで受け入れるように
またゆっくりと
瞳を閉じる
ああ、そうか
やっとかよ
「好きだ」
始めて
気持ちを交わして
口づける
やっと
心の距離すら
無くなった
想いの丈全てを唇に乗せ
伝わってくれと
切に願う