第6章 体育祭
ああちくしょう
クソ嬉しい
あの時の告白の答えを聞くのを先延ばしにしていた身でありながら
今すぐこいつを
自分だけのものにしたい
キスも抱擁も
いつもそれは一方的なもので
今だって
腕を回しているのは俺だけで
俺の想いもまだ
一方的なもんだとばかり思っていた
なのに
そんなこと言われたら
期待しない奴なんざ
いねえよな
「ああくそ
早く体育祭終われ」
この日の為に訓練を重ねてきたものの
今だけは欲望が先行する
あと半日も経たずにやってくるはずのその瞬間を
もう待ちきれないでいる
彼女を抱く力がこもる
『…爆豪…?』
何かを必死に我慢する俺の姿を心配に思ったのか
不安そうな声を出す
「くっそ可愛いな…」
『ほへっ!!?』
「あ!?」
ついつい漏れてしまった言葉に互いに慌てだす
『へっは!?はひ!!?』
言葉すら上手く紡げない神奈
「ああくそが」
がばっと彼女を引き剥がし
その細い肩を掴んだまま
真っ赤に染まった顔を視界に入れる
「だあら…かわいいっつったんだよバーカ」
『っ!!!』
面と向かってはっきりと言われる破壊力になすすべなくノックアウトする彼女を
追い打ちをかける様にゆっくりと顔を近付けて
了承を得る様に
見つめたまま鼻先が触れ合う距離で止まる
神奈は近づく途中でダウンし目を閉じてしまったが
息すら薄っすらかかるこの距離に
いつ口が触れ合うかと固まっていた
「んで押し返さねえんだよ」
『っ!それやって良かったんか!』
ハッとしたような顔をする神奈に
今迄と違うことを思い知らせる
「お前…今までならおもっくそ押してきてたじゃねえかよ
蹴られたことも殴られたこともあったぞ」
『そ…それはすみません…自己防衛本能的なもので……』
苦笑いで誤魔化そうとするがそうは行かせねえぞ
「今は…無理矢理しねえぞ」
『なっ!』
押し返すもんなら
そんときは一回は開放してやる
まあ今我慢効かねえから
一回離したらすぐ無理矢理やるけどよ
そんな卑怯な思考を知りもしない彼女は
どちらを選ぶのだろうか