第6章 体育祭
そして待つこと数分
両手に何かを携えた爆豪が姿を現す
思わず私は立ち上がり
彼のもとへ駆け寄る
「座ってろや」と言われるが気にしない
『買いに行くなら一緒に行ったのに…』
「…」
ん、とその手に持ったものを一部
こちらに突き出す
『……え、もしかして私の分も買ってくれたの…?』
「…」
彼の無言は
大抵肯定の意味だ
しかもその手に握られていたものは
屋台では珍しいベトナム料理のフォーと
スポーツドリンクだった
『爆豪……ありがとう』
私の個性を考慮して買ってきてくれたんだろうソレは
私の胸を、締め付けた
嬉しさで死にそうだ
『ふふっ…フォーって売ってるんだね!祇園さんでも見た事なかったよ。さすが雄英だね』
爆豪がフォーを買っている姿を想像して
胸がほっこりとする
『これ全部でいくらだった?』
ポケットの財布を取り出そうとするが
その手は途中で止められる
「いらねえよ、男に花持たせろ」
『む…』
そう言われてしまえばもう引き下がるしかなくなってしまう
爆豪は、そういう言葉選びがズル過ぎるよ…
いつもに増して男らしい彼に
少し顔を紅潮させて俯いてしまう
「冷める前に食うぞ」
ほら、と私の分の空間を隣に開けた状態でポンポンとそこを叩く
『ありがとう爆豪。何から何まで…』