第6章 体育祭
俺は少し
優越感を抱いてしまって
神奈と自分の距離感に
余裕をかましてしまっていた
それが今回の敗北の原因だ
だがこの体育祭で
元々本人の存ぜぬ所で有名だった神奈の存在が
大衆の目にも曝されて拍車がかかる
他クラスとの交流もあり
神奈に興味を持つ輩は急増するだろう
ただでさえあの稀有な個性だ
サイドキックは勿論
テレビでも大々的に放送されるこの体育祭で
注目を集めない訳がない
おまけにあの容姿
以前ブスだと罵ったが
そんな事思ったことは一度も無かった
柔らかい黒髪は簪で一つに纏め上げられ
細白い首筋が曝け出されている
瞳は大きく、見つめられるといつも目が離せなかった
細っこい腰とは裏腹に
女性特有のおうとつはしっかりと主張し
しかしそれは品のある彼女に似つかわしい程のものだった
見た目だけじゃねえ
あいつの声も
そうなんだ
あいつの声はまるで
子守歌みたいな
そんな優しい音がする