第6章 体育祭
「何気安く触ってんだよ隈野郎…」
振り返ると
般若のような顔をした爆豪が
後ろに佇んでいた
『爆豪!?』
ギリギリと心操君を睨み付ける彼とは反対に
心操君は、毅然とした態度のまま
「じゃあまた後で」ともう一度頭を撫で、手を振り去って行く
「チッ」と盛大に舌打ちをした時、プレゼントマイクの放送で昼休憩を告げられて
「…飯行くぞ」
と、有無を言わさず引っ張られたが
途中で何かを見つけたのか
爆豪は食堂とは違う方向に向かって行く
『??…爆豪、何処行くの…?』
「……」
何も言わない爆豪に
何か理由があるのだろうと
黙ってついて行くことにしたが
ブブブッと突然着信が鳴る
『あ、師匠からだ』
チラリと爆豪を見れば
一瞬スマートフォンを見た後に
「出ろ、俺は少し用事済まして来る」と言って手を放してくれた
『ごめんね?』
片手を顔の前に出し謝罪のポーズをした後
すぐさま会場の隅に身を隠す
『はい!神奈です、何ですか師匠?!』
小さな機械に向けて元気よく発する
師匠曰く、最近耳が遠くなってきてる気がするんだそうで
結構な声を出さないと無言電話が続くことがしばしばあったのだ
「ああ、神奈ちゃん、悪いんだけどねえ、ちょっと手伝いに来てはくれないかい?」
『え?分かりました!』
やっぱり体育祭ともなると負傷者が続出するのだろう
「お昼食べた後で良いからね」
『はい!』
「あと、よく頑張ってるね
大したもんだよあんたは」
『!!!』
唐突な労いの言葉に息が詰まり
涙腺が緩む
『しっ…師匠……ッ!』
「おや?まだ泣くのは早いさね。ココからが正念場だよ
神奈ちゃんなら
優勝出来る」
『〜〜ッはい!!!』
あぁ、俄然
やる気が出て来ましたよ
師匠にここまで言わせて
もう敗けは許されない