第2章 気に入られた子
「こいつさ、まだこどもだから俺が面倒みてやんないとでさ」
「うん」
「こいつの母親、俺が、引き殺したんだ。」
「!」
簡単な話だ。勝負にばかりこだわって、勝つためだけに走っていた。だから何も気にしてなかった。
「寿一にも言ったけど命はさ、取り返しつかないだろ」
勝つ人がいれば負ける人も居る、でも命をとられたら諦める事も臨む事も、こどもの成長を見届ける事も何も出来なくなる。
「でも自転車、回してるでしょ?」
そう聞かれ驚く新開
「あ、やっぱり?」
「なんで分かるんだ?」
「だって福富君が容赦なく“来年はメンバーとして走ってる”なんて言ってたよ。そんな事言われたら」
『ぜってー戻ってくる』
靖友にそう言われた。福富君にもだ。
「福富君にそんな事言われたら絶対戻るでしょ?っしかも早くなって戻らないといけないなら部活休んでても練習してるでしょ?」
「けど・・・俺、今、左側が抜けないんだ。悪いイメージがぬけない。」
「そんなの・・・」
「「問題ない」」
福富、東堂、荒北と話していたら名と福富の言葉がかぶった。そもそも、この場を設けさせてくれたのは名だった。あの後、
「問題ないよ新開君!先頭走ってれば良いんだよ!靖友も先頭は何もなくて気持ち良いって言ってたよ!」
「名・・・」
と途端に名は立ち上がり、こうしちゃいられんと携帯を出し
「皆と話そう!」
「今?!」
確かに部活は終わったし、それでも練習していてきっと部室には居るだろうが
「はい!電話したから!」
「しかも靖友・・・」
「だって他知らないし」
そうして、電話をかけると運が良いのか悪いのか丁度更衣室にでも居たのか荒北が電話に出る。始めは名と思っていた様だったが反応がないことに
『新開か・・・』
と当てられた。
「はは、良く分かったな」
『どーせあのバカがふっかけたんだろ』
仲が良いんだなと思うのと同時に、自分と福富との関係に似たものを感じた。
「・・・話がさ、あるんだ。今から」
『全員居る。ちんたらしてねーで早く来い!』
そう言って荒北は電話を切り、
「さ、行って」
隣では名が新開の背中を押した。