第2章 気に入られた子
(ここって・・・)
着いた場所は購買の調理室。少しの間見守ると
「ありがとうございました」
と、葉野菜が入ってる袋を持ってまた移動する新開。そして、最後に行き着いた先は飼育小屋。
「待たせたな」
声をかけると小屋の中から小ウサギが出てきて新開はそのウサギに先程もらった葉野菜をやる。餌をやり、抱き上げ撫でている姿を見ていると
「ここまでついてくるとはなー」
とふと視線があい、ついてきた事がばれる。
「新開君・・・」
仕方なく出ていくと苦笑する新開。
「靖友か?」
「ううん。荒北達には放っておけって、大丈夫だからって」
「そっか」
うさぎをおろし、小屋に戻す。
「ごめんな」
と手洗わないと頭も撫でられないなと笑う新開に
「新開君がお世話してるの?」
「あぁ、うん。うさ吉ってゆーんだ。可愛いだろ。名もたまに来てあげて」
そう笑う。今回の原因の1つがうさ吉だと思うが、やはり踏み込めない様な気がしてその日は二人で帰った。
「明日は出るよ」
「うん。」
そして次の日、新開は部活に出た。覗きに行ったので確実だ。けれどどこかカラ元気で靖友にきくと時たま休んでいる様で、タイムも落ちている様だった。昔から自転車に乗っていたのをきいているし、いつもの様子から自転車が大好きなんだと思う。
「うさ吉ー、お前の主人が元気ないんだよー」
なのに、元気がないのは何かまだ吹っ切れていないから。靖友の様に居場所をなくすと復活するのに時間がかかるのだ。
(靖友みたいな人は見たくないな)
「何が原因なんだろねー。お前知ってるだろー」
とキャベツを頬張るうさ吉を見ながら話しかける。それから何度か福富達がクラスに来たがそれもなくなり、結局新開は部活に出なくなった様だった。
放課後、うさ吉のところに行き
「早く元気になってほしいねー」
と撫でていると
「おめさんホントに来てくれてるんだ」
と新開が現れ、一緒にうさ吉を撫でる。
「早くご主人が元気になってほしいねーって」
新開と居る時はいつもリズム良く空気が流れていた。明るくてお日様みたいでハキハキしていて、けれど最近の新開との時間は少しテンポが遅く流れる。
「そうだなぁ」
と苦笑する新開はどこか悲しげで
「新開君」
「ん?」
「・・・・何があったの?」
そう聞くと、眉をハの字にさせて、諦めた様にため息をついて話し出してくれた。