第2章 気に入られた子
けれど改めて話すというか、部活を休んでいた後ろめたさもありなかなか足が進まない。
「早くー」
名も、無理矢理背を押すが全く歯が立たず
(男子ってやっぱり力ある)
と思っていると、するっと新開は名をすり抜け、手にしていたうさ吉をゲージに戻しに行った。それを見て、名は無理矢理だったかと肩を落として先に部室の方へ向かった。新開はそんな名の姿が見えなくなると自分も部室の方へ向かい、曲がり角のところで自分を待つ名を見つける。
「一緒に行ってくれる?」
「・・・・先に行って」
呆れた感じで言う名、言われた通りに歩いて行くと名がワンテンポ遅くついてくる。決して近付いてくることはなく、一定の距離感を保ったまま、止まれば止まり、進めば進む。
(一緒にってこーゆー事じゃないんだけどな)
その名の行動に笑えてしまい、部室のある敷地前まできた。新開が立ち止まっていると名も止まっていたが目が合い、手まねくと隣までやってきて
「行ってらっしゃい」
と礼を言う前に見送られてしまい、部室の戸を開いて今に至る。
雨が降りそうな天気、傘を持っていて良かったとぼんやり考えながら更衣室では何を話しているのか気になりつつ、なんとなく外で待っていた。話してくれた時、福富君とも話していたのならもう今しかないと思った。初めて会った新開君は明るい人だと思わせる雰囲気だったのにあの日以来、すっかり目も伏せがちになり明るい色が抜けたみたいな感じだった。こんな事して靖友にどやされるな、そもそも、こんなところに居たら
「あぁ?なにやってんだてめぇ」
とドアが開き、呆れ顔の靖友がこちらを見る。
「お、お話は?!」
そうきくと、にっと笑って
「今から回してくっから中で待っとけ」
と頭を捕まれ、端に追いやられる。靖友に続き、新開、東堂、福富がジャージ姿でスタートしていく。
「つーかお前らなんでついてきてんだよ!!」
とごちゃごちゃ言っている靖友と東堂を見て笑っている新開、それを見て、行ってしまった四人の姿に大丈夫だと思った。更衣室の中でって言うけどあいつはバカか、曲がりなりにも女子なのに、全く扱いのひどさよ。と名はぶつくさ言いながら、四人を待つことにした。