第2章 気に入られた子
一位をとった荒北はその後福富を引くアシストに撤する様になって、あっと言う間に二年生になり
「よろしくな名」
「よろしく新開君」
新開と名は同じクラスになった。
「靖友とじゃなくてごめんな」
「何言ってるんだか」
荒北とは中学から同じクラスになった事はなく、別に一緒になりたいと思った事もなくそう言われて内心少し驚いた。始めの内は新開も荒北の様に授業が終わるとさっさと部活に向かい、名は皆自転車好きだなぁと染々としていたが、ある日から新開は授業後もクラスメイトと話して部活に行く時間が遅くなっていった。そして福富が新開を訪ねに来るようになり、
「新開君最近部活行ってる?」
そう聞くと、
「そうだな。今ちょっとな」
と苦笑しながらはぐらかす新開。その内、東堂と荒北も訪れる様になり違和感を感じる。
「新開君何かあったでしょ!」
「うっせーよ」
いつもの屋上。
「関わんな」
「何かあったんだね」
「ほっとけ、福チャンに任せとけ」
そう言われても、気になるのは気になるので、
(やっぱり来てない)
久々に来た自転車部部室。
(昔はあの辺りが靖友だったな)
と前とは違うことを思う。そして、今日の新開は行ってくると言って教室を出たのに、
(嘘つき。)
去年は福富の隣が新開だったはずだが、そんな福富の隣には居るはずなのに居ない人の分であろうローラーがあいていた。そして去年はよく倒れていた靖友が今は二年生としてかっこよく回してる姿を見て
(かっこよくなったな)
と覗きをやめ、壁に背をついて安心していると、覗いていた窓が頭の上でガラッと音をたてて
「来んなって言ったろ!」
と荒北が顔を出す。
「すみません・・・」
「あいつの事は放っておけ」
そう言ってくる荒北に大人しくなる名。
「ホントに君はおせっかい焼きだな!」
「うっせー東堂。黙れ」
「東堂君・・・」
今ではすっかり知り合いになった東堂。
「新開の事は気にするな。きっと大丈夫だ。」
その東堂に去年荒北は大丈夫と思っていた自分と重なり、少し安心する。その次の日、新開がどこに向かっているのか気になり、後をつけることにした。