第6章 届けたいものは
昼休み。屋上であろう上の階から名が降りてきて声をかけようとした新開。
しかしその顔は誰を想ってか頬をほんのり染め、愛しそうにしていて
「名」
と声をかけるとはっとした表情になったのを見て
「今日、放課後に返事もらえる?」
ともう脳裏で返事はダメだと言っていた。
「・・・うん」
元気がなさそうな名を見送っていると案の上、靖友が上から降りてくる。
「や」
「おぅ」
それだけの挨拶を交わし先を行く荒北。名と何かあった感じはなく、ならば名が自然と顔に出すということは・・・
(返事、本当に駄目そうだなー。)
でも荒北に取られるのもなと思いつつ
(きっと名の事だから「嫌いではないんだけど」とか言っちゃうんだろうなー)
なんて思うと
(はぁぁ。放課後まで気が重い)
返事が分かる告白というのは気が重い。
(ウサ吉に構ってもらうしかないな)
と放課後をまった。そんな同じクラスに居る名は
(新開君になんて言おう。なんて言おう。)
と焦っていた。
断る。断るしかないのだが、あんなに、こんなに優しくしてくれる人が居なくなるのは寂しいというか、自意識過剰、そう自意識過剰なのだ。断ってもきっと今まで通り優しくしてくれる。新開君なら何を言っても・・・・いや、よくない!良くないよ。新開君は優しいから甘えてしまっているんだ。きちんと返さないと失礼だ。失礼だけど・・・・。自分が可愛いのか
(断るって・・・・気が重い。)
そんな放課後。
「よ」
「うん。」
「返事、決まった?」
「うん」
笑顔の新開に対して、下を向いてしまう名
「分かってるけどさ、ちゃんと名からききたい」
「ごめん。」
「何が?」
「私、新開君とは付き合えない」
直球な言葉
「好きな人でもいる?」
「い、いない。けど、新開君を恋愛の好きにはなれない」
下を向きっぱなしの名の顔をあげさせて、
「ちゃんと返事くれて良かった」
顔を真っ赤にしている名にそう言うと、
「ちゃ、ちゃんと言うよ。」
「言ったついでに好きな人も言ってごらんよ」
そう良いながら新開は名の唇に近づいていく
「し、し、し新開君っ!?」