第6章 届けたいものは
ふったにも関わらず攻めてくる新開。途中で止めてくれるのかと思いきやどんどん近づいてくる新開に
「や、靖友の方が・・・好きなの!」
そう言うと新開がぴたりと止まり、おそるおそる本人を見てみると必死に笑うのを堪えている様子。
「た、多分だけど。し、新開君より好きなんだと思うの・・・。」
「まぁ、分かってたけど、振られる理由が予想通り過ぎて、ふふっ」
「ちょっと、笑わないで!恥ずかしいからっ」
けれど、それよりもふったというのに笑顔をくれる新開に救われた。
「はぁ、いつから好きなの?」
「わ、分からない。」
「靖友の事考えてない日ないでしょ?」
「たまにはあるよ。」
「殆どって事だ」
そう言ってまた笑いだす新開に、言われてみれば一日のどこかしらでふと荒北の事を考えている自分に気づき
「なんで靖友なんだろう・・・」
「そんな事言うなら俺にしときなよ」
ばっと新開を見れば、冗談混じりな言い方なくせに大真面目な表情。
「だ、だめ!」
そう言うと
「全く、靖友が羨ましいよ」
と新開は少し寂しそうに笑い
「返事、ありがと」
と名を残して屋上を出ていった。時間を置いてからから屋上を出ていこうとすると
「あ」
「・・・」
そこには
「話きいてた・・・?」
荒北がなんだか複雑そうな顔をして屋上の出入り口のところに座り込んでいた。
「いや」
即答の反応に安心していると立ち上がった荒北に頭を捕まれ
「新開のせいか」
と問われる。気づけば潤んでいた名の瞳。
「なんでもないよ」
と言う名を見て、なにか言いたげな、けれども言わない荒北。
「話ならいつでも聞いてやる」
そう言われて今度は名が座り込んでしまう。それにつられて荒北も座り込めば、うつむいたままで一言、聞き間違えかと思う名の一言が荒北に届いた。
「好きなの」