第6章 届けたいものは
キィ。
会いたい様な会いたくない様な、けれど今日も来てるかもと僅かな期待をもちながら屋上へ向かい誰もいない事に少し安心して日陰で昼をとる。するとまた扉があく音がして
「あっついのによく来んな」
なんて言いながら荒北が現れ、お互い話すことも特になく時間が過ぎて行く。
いや、話すことはあるのだ
「荒北誰かと付き合ったりしないの?」
前から気になっていた。自分もだが荒北にだって同じ話題はないのかと。しかし、
「そんなんめんどくせ」
と即答
「部活だけだ」
恋愛よりも大事なものがあると、頑張りたいものがあると言う荒北に、そんな恋愛で頭がいっぱいな自分はしょうもないなと思えてしまう名。
「お前、新開いんだろーが」
「・・・やっぱり知ってるんだね」
「・・・いーんじゃねー新開」
俺と違って女子うけは良いし、優しいし、人当たりも良い、申し分ねーだろー。俺にも
「お前にも勿体ねーよ」
「は、荒北に言われたくないわ」
と乾いた笑い
「返事してやれよ」
「うん・・・・」
元気のない名。別に嫌だったらとっとと返事をしてやればいいのに、それを渋るって言うことは
「す・・・ほ、他に好きなやつでもいんのか」
そんな理由しかないだろう。そして、そう聞いた時の驚いた名の表情が
(妙に鼻につく)
あの後、
「そんなん居ないよー」
と笑ってそそくさと帰る名が明らか怪しく
(居んだろっ!あの反応は!!)
どこのどいつだ?新開じゃねーのか?じゃぁ誰だ?中学の奴か?俺の知らねーとこで何知らねー奴と恋愛してんだあの馬鹿!!!
ガンっ
と鈍い音がしたかと思えば部室の出窓に頭をぶつける荒北。福富が心配するなか東堂達は大笑いで
(あのボケ女。相手いるなら相談しろよ!確かに?俺はそーゆーのダメだけど!!あーーくそ!)
まさかの自分の知らないところでちゃんと恋愛をしていた名、それに気づけなかった自分がくやしくて苛立ちを覚える。
一方
「好きなやつ・・・」
そうきかれ、焦って出てきてしまった名。馬鹿荒北。しかも新開君じゃ勿体ないって?んなの分かってるし!!
(荒北、私居なくなっても大丈夫かな・・・。嫌だったら良いのにな)
そう思っていると
「名」
と新開に呼ばれはっとする。新開の前では荒北の事を考えているのはいけない気がするのだ。