第1章 終わりと始まり
「部活頑張ってるね」
「だーかーらぁー!!こっち来んじゃねーよお前!」
いつもの様に屋上に行き、本気でもない文句を無視し、嫌がる荒北の隣で昼食をとる名。
「足」
「なんだよ」
「あんなに回して今度は足!痛めないようにね。」
「バカかお前?!そんなヘボな事っ」
荒北も、名が本気で心配してくれている事に気づき
「次はしねーよ」
と大人しくなる。
「うん」
「てかー、なんで知ってる」
「・・・あ」
その反応で荒北は全てを察し
「お前!見に来たのか?!そーだろ!見に来たろ!!!」
と声を上げ、勢いにのってベプシを投げる。
「いーじゃん別に行ったって!しかもベプシの炭酸抜けるし!」
「よくねーよ!!!」
「邪魔してないしいーじゃん!」
「邪魔とかじゃねー!」
そうじゃなくて、まだ見てほしくなかった。馬鹿してた姿を知ってる名に、もがきだしたみっともない自分を見てほしくなかった。
「倒れるまで部活して!」
「クソッ!お前、そこまでっ!」
まだ何もない自分を見られたくなかった。
「前みたく浮かれる事なくダサダサじゃん!」
「前も今も浮かれてねーし!しかもダサダサとか言ってんじゃねーぞ、このボケ女ぁ!」
何てこと言うんだと名が言い返そうとしたその時、部室を覗きに行った時に会った男の子が現れた。
「なんだ?あぁ?新開っつたか?」
名は急いでお昼を片付けてそそくさとその場を離れる。
「あの子知り合い?」
「しらね」
あれだけ話していてそれはないだろうと笑う新開。
「で、何の用だ」
「うちの東堂がね。おめさんの事煙たがってる」
「知ってる。あのカチューシャだけじゃねー、全員に嫌われてる」
少し聞こえる話を耳にしながら、そんなことないよと思いながら屋上を出ていく。けれど出ていく時には
「多分、好きだよ。」
と言うのが聞こえて、この学年に荒北を気に入ってくれる人が現れた事を嬉しく思った。
「あのさ」
「はい?」
その後、名に声をかけた新開。
「荒北の知り合いだろ?えーっと・・・」
「苗」
「俺は新開、よろしく苗さん。」
苗さんはどちらかと言うと美人顔で、警戒心を持った目で俺を見て
「・・・足」
「え?」
そして少し迷った様に
「荒北の足はあんなに回していて大丈夫なの?」
そう聞いてきた。