第5章 意識してる
言ってしまった。本当はまだ言うはずではなかったのに、店で宮田先輩と靖友の話している時の名をみていたら焦ってしまったのだ。案の定、寮へ帰ると夕食時は二人ででかけた話でもちきり、皆にはなにもなかったと言ったものの、
「名に好きだって言ったよ」
と靖友にだけは伝えた。伝えれば靖友がどうでるかななんてことは内心わかっていた。靖友は必ず動く、そう、思っていた。
かっこいい新開君。人気者でどっかの誰かと違ってきちんとしてる。
(なんで私?)
私にはもったいないと思う人。夏休みからなにかが変わってしまった。けれど靖友とは違った感じの心地よさがある。新開君の隣にいるとなんだか、可愛くしてないといけない緊張感と女の子でいられる自分がいる。
ガチャ
「「あ」」
夏休みが明けたとはいえまだまだ暑い屋上の昼休み。最近、上にあがってこない荒北をいいことに日陰のところで一人もんもんと昼食をとっていた名と、きっと名が屋上に来ているだろうとふんでいた荒北が鉢合わせた。
(なんで来たし)
(やっぱり居やがった)
曖昧な挨拶をかわし、二人昼食をとる。同じ寮だ、話は聞いているだろうと思い荒北を見るがなにも反応がない様子に少し安心し、半面寂しくも思う。
(なんで寂しがってんだか)
「じゃな」
「え?」
あっという間に昼を食べ終わった荒北は先に屋上を出て行こうとする。
「暑いから気を付けろよ」
「わっ」
頭をくしゃくしゃにされ、
「荒北の方が外で部活なんだか気を付けてよー」
と返せばさらにくしゃくしゃにされ
「うっせ」
と先に教室へ戻っていった。というか、暑さをどうこうの言うなら初めから中で食べればいいじゃないかと思いつつ、その対応に事情を知っていると悟り、それでも何も言ってこない事が悩ましかった。そもそも、デートを許すなんて思ってもなく、絶対に断ってくれるとそう思っていた。小学生の時も、中学生の時もなんやかんや一緒に居て私が危なくなるとすぐに駆けつけてくれていた。いじめっ子と戦っていた小学生時代も、男子に変な目で見られたり、言い寄られたりした中学生時代も
「なにしてやがる!!」
と悪態ついて、追い返してくれる。
(あぁ、そうか。)
そうやって、私が構っていたつもりだったのに