第5章 意識してる
『靖友も人気だよ?』
と言っていた新開を思い出す。
(人気ないじゃん靖友!ねぇ新開君!!)
そう思った一瞬だったなと二人の登場を振り返る帰り道。
「おめーは歩けよ」
ゆっくり、ゆっくりビアンキのペダルを漕ぎながら歩く荒北の横を並走する名。
「いきなりでびっくりしたよー」
「名が縁側で寝てるの丁度帰ってくる時に見えたんだよ」
「あちゃー」
「みっともねーなー」
と笑う荒北に
「うっさい荒北!」
「あぁ?」
「自業自得だな靖友」
笑う新開につられて
「言われてやんの靖友ー」
と名前で呼んだ事を気にしつつ一緒に笑う。
(あ、名前で呼んじゃった・・・)
怒られるかと思いきや
「うっせ、お前は黙ってろ!ったく」
(あ、怒らない)
「ってこの自転車難しい!」
そう言って名がビアンキから降りると
「そんだけ乗れればお前の場合は十分だ」
と嬉しそうにする荒北。なんでだか自慢気な荒北を不思議に思っていると
「今度教えてあげようか?」
と新開。
「え?本当?」
新開の申し出に断るそぶりを見せない名に
「余計な真似すんじゃねー新開」
とつっこむ荒北。
「余計・・・って荒北と違って新開君は優しいだけだよー」
「そーそー」
一緒になる二人にけっと舌打ちして先に進む荒北。
「俺はどこぞの馬の骨らしいから」
そう言うと
「荒北は私のお父さんか!」
と笑う名。
(お父さんなら説得できるんだけどなぁ)
さながら名を守る騎士。しかも名も荒北を守る騎士ぶっているので困ってしまう。
「名さ」
「うん」
「今度俺とデートしようか」
「「は?!」」
「さすが幼馴染み」
驚きの声が被る二人に
「別にいいだろ?」
と荒北にきけば
「俺じゃなくてそっちにきけ、そいつ次第だろ」
とまた一人先を行く。てっきり止めてくれると思っていた荒北の以外な反応に困惑する名
「だってさ、どうする?」
「どうするって・・・・」
「ま、デートって言ってもバイク屋に行くだけだけど」
「あ、ぽん」
「ぽんって」
笑う新開にその笑顔なら大丈夫となぜか思ってしまい、デートを受けることにした。
(正気かこの二人)
(し、し、新開君とデート)
(案外さらっといけたなぁー)
三人の思いと想いが交差しだした二学期の始まりだった。