第5章 意識してる

同じクラスの新開君はそれはもう人気者で、男女問わず人気だけど、やっぱり女子からの人気が凄いです。

あの夏休み、祭の音がする中私を見つめ近づいてくる新開君に緊張感を覚えたのは確かで、気になって改めて見た横顔は凛々しく男らしく、それがはっとこちらに気づくとすぐに笑顔になってくれる事に心地よさを感じた。
「きゃー新開君ー！」
と茶道部部室の離れの和室窓から部活中の新開を見つけ声をかける女子達。新開を好きになる気持ちがなんとなく分かるなと思い自分も外を見れば一緒に走る荒北の方に目が行ってしまい親バカならぬ幼馴染みバカだなと笑えてしまう。
（去年とは大違いだ）
ロードは全く分からないが去年とはスピードが違う感じがする。昔から不良の気質はあったけど、ガキ大将を呆気なく倒してしまう正義はつけにくいヒーローだった。小さい時は
「とーもー君」
「君づけすんな！」
小学生の頃は
「靖ー」
「下の名前で呼ぶんじゃねー」
そうして中学の時には荒北と呼ぶようになっていた。新開君は荒北の事を靖友と呼ぶ、そう言えば新開君は私の事も名前で呼ぶな。あ、荒北はどうだったっけ？この前は苗字だったな。荒北は新開君より線が細いけど、あれはあれで男らしくなったと思う。送ってくれた時の背中、骨ばって広かったな。
「名先輩、名先輩」
「んー」
「起きてください」
部活後、掃除当番でないのを良いことにすっかり部室の縁側で眠っていたらしい。
「おら、起きろクソ女！」
うちの部にそんな口を聞く奴は誰だと、聞き覚えがある声だとぱっと目を覚ませば
「おら、帰んぞ！」
と荒北が目の前に居た。
（最近は苗字すら呼ばれてなかったかー）
そう凹んでいると後ろからひょこっと
「一緒に良いかい？」
と新開が現れた途端、部室で悲鳴があがる。
「名先輩、新開先輩と知り合いなんですか？！」
「なんで名先輩と新開先輩？！」
「「「とにかく、きゃー名先輩ー」」」
「わっ」
新開を連れて来てありがとうと言わんばかりに後輩、先輩が名に抱きつき雪崩れ込む。
「帰んぞー」
呆れ気味の荒北に
「仲良いねぇ」
と微笑ましく見守ってくる新開。
「みんな退いてってー」
名は皆荒北は無視かー！と少し思いながら