第3章 気づいてほしいこと
「珍しいなお前が」
「苗が帰り、駅まで送れってゆーから」
と、めんどくさそうにそう言う荒北は福富の了承を得て迎えに行く。
「あいつに福以外に頭が上がらない、しかも女子が居るのだな」
そう笑う東堂
「ほんと、優しいとこあるよな靖友って」
去年はよく送っている様だったし、まだ頼まれる仲ではないかと少し悔しく思いながらローラーを回す新開。一方、
「ごめんね」
「全くだ!」
申し訳なさそうにする名に容赦ない荒北。
「なんで一人で残ってんだよ!他にも部員いんだろ!」
「道具の片付けしたくて」
「そんなんみんなでやれ!ったく。オラ、乗れ」
そう言って、どこからか借りてきた荷台つきの自転車。その荷台にまたがる名。
「警察に捕まっかなー」
「駅近くになったら降りようか?」
「駅っつーか警察見つけたら降りろ。」
「はーい。」
去年は帰りが遅い日に連絡すると送ってくれていたが靖友が部活を始めてからはなくなり、名も遅くまで残らない様にしていた。
「久々だね。」
そう荒北の背中にくっつけば
「汗臭っ!」
と瞬時に離れる。
「うっせー!黙れ!部活行った後だぞ当たり前だろーが!」
「だから運動部の子って・・・」
「着替えて来ただけ有り難く思え。」
するとまた名がくっついてきた。
「汗臭ぇーんじゃねーーの?」
「そーだけど。なんか平気」
幼い頃はぺたんこだった胸の膨らみも感じつつ名の体温が伝わってくる。
「また」
「ん?」
「たまにだったら送ってやる」
「ありがとう荒北。」
駅につき
「帰ったらシャワー浴びなよ!」
「わーってるって」
「気を付けて帰ってね」
「お前もな」
「うん」
「早く行けって」
「見送ろうかと」
「お前、なんのために俺が部活切り上げて送ってやったと思ってる。良いから早く行け!」
「分かった。じゃ、ありがとねー!」
「おぅ」
荒北に見送られ改札を通る名。少し歩き、きっともう靖友は居ないだろうと後ろをみるとまだこちらを見ており、しっしっと手をふってくる。ホームに上がる階段前でもう一度後ろを見るとまだ靖友は残っていて手をふると返してくれて、名はやっと階段を登った。