第32章 Rey25

「その辺にしてあげて、零さんにも事情があったんでしょ？」
『今更だけどちゃんと説明します…』

社長にスカウトされた時はアイドルになるつもりはなかったこと。
性別に関しては社長の方針だったこと。
人前で歌うことにトラウマがあったこと。
みんなを見ていたらアイドルになるのも悪くないかもと思うようになったこと。
そんなことを掻い摘んでみんなに話した。

「お兄さんそれ以外にも知りたいことあるんだけど」
『それ以外って大和さんは全部知ってるでしょ』
「いーや？八乙女との関係が知りたい」
「八乙女ってTRIGGERの八乙女楽？」
『う、うん…まぁ…、ぁ』

なんてタイミングだ。
スマホに着信が…登録してないけど何度も見てるせいで番号を覚えてしまった。

「もしかして八乙女？」
『…………はい』
「出ればいいだろ」

そう言った大和さんがそっぽを向いた。
どうしてかは知らないけど、敵意あるよね。楽に。

『もしm』
《零か？》
『私じゃなかったらどうするの』
《お前以外の女に仕事以外で電話なんかするかよ》
『口説き文句は間に合ってるから。で、要件は？』
《釣れねえな…まあそこがいいんだけど。会見見たぜ。お前のバラード、来るモノがあった》
『恥ずかしいからその話しないで…それに今事務所で…って、あ！？』
《ん？どうした？》

大和さんが私からスマホを奪い取ってスピーカーにした！？
なんてことをしてくれてるんですか！！

「どーもうちの音無零がお世話になってます！！！」

それも怒ったような口調なんですけどーーー
なんだか嫌な予感……。

《誰だお前》
「IDOLiSH7リーダーの二階堂大和だけど？」
《あぁ、あの眼鏡か…それでなんでお前が零の電話に出てんだよ》
「悪い虫がついてるから取ってやってるだけだっての」
《悪い虫ってお前のことじゃねえのか？》
「…はあ？」

「なんかこれマズくないか？」
「音無さんすぐ電話切ってください」
『大和さんスマホ今すぐ返して！』

スマホ持って腕を上げられたら届かないんですけどね。
ダレカタスケテ。

「イヤだね。お前さんと八乙女の関係聞くまで返さない」
《ガキだなこいつ》
『楽言わなくていいから！！！』
《おう、零が困ってるみたいだし今から行くk》