第32章 Rey25
25
ついにこの日が来てしまった。
私…もとい、Reyのデビュー会見当日。
社長も同席するって言ってたけど…正直不安なのはどうしようもなかった。
黒を基調とするシンプルなステージ衣装に、腕にはシルバーのアクセサリーを身に付けての会見となる。
「本日は小鳥遊プロダクション所属、Reyのデビュー会見にお集まりいただきありがとうございます」
カメラのシャッター音が聞こえる。
私に向けて撮っているのだろう。慣れていなくて少し怖い。
『紹介いただきましたReyです。経験は浅いですが、精一杯歌っていこうと思いますのでよろしくお願いします』
「10年に1人の逸材と噂されていますがそれについてはどう思っていますか?」
『そんな噂があるんですか…?』
初めて聞いたんだけど…!
埋もれさせるには惜しいっては言われてるけど。
「あながち嘘ではないけれど、Reyの歌声を聞けば納得すると思います」
『しゃ、社長…ハードル上げないでください…』
「事実だから仕方ないよね」
社長…味方じゃなかったの…?
ヘマしたらどうしよう…。
「ミュージックフェスタで話題になりました性別について教えてください」
来た…。
すぐ来るとは思ったけど。
「ネットでは性別はReyと噂になっていましたが…」
『ここで言っていいんですか社長』
「いいよ」
そう社長が答えると会場が騒ついた。
と言うかそこまで分からないものなのかなって自分でも不思議だ。
『私、Reyは女性です』
記者たちの声がマイクを通さないで直で聞こえて来た。
「嘘だろ」とか「あの声で女性…?」とか…私が嘘を言ってるみたいになっている。
「Rey、地声で話して」
『はい…でもトーンが少し上がるだけですよ?』
「それと前髪上げて見せて」
ガヤガヤと外野がうるさい。
雰囲気は違うけど性別がわかるまでに至ってないのかも知れない。
『は、はぁ…これ信じてないですよ。どうするんですか社長』
「Reyを分かってもらうには歌声を聴いていただく他ありません。本日初公開の新曲を聴いていただこうと思います」
社長が私から離れ、Schatzの前奏が流れる。