第31章 Rey24
「知ってる。お兄さん充電切れそうだったから」
『充電って…』
「またぎゅーってしたいなって」
『しません』
「ケチ」
ホント…大和さんって大きいお友達か何かかな。
拗ねる大和さんってちょっと可愛いと思う。
本人に言ったら怒ると思うけど。
「零がデビューしたらなかなか顔も合わせられなくなるんじゃないかって不安になった」
『どうしてそんな事…』
「お前の弱い部分を知ってるのはここでは俺だけだし、零を1人にさせたくなかったって言ったらどうする?」
『……大和さんは彼氏か何かデスカ』
「そうなるよな。俺もどうかしてると思う。でもこれが本心なんだよ」
大和さんの口からは恋人に言ったら喜びそうな言葉ばかり出て来る。
それがどうしてかを自分でわかってないみたいだ。
それを言われる私もよく分からないんだけど。
『私はこれから伸びなきゃいけないから弱音なんて言ってられない』
「そうだよな…。……なあ」
『ん?』
「バラード曲まだ未発表だけど、ここで一回歌ってくんない?」
『IDOLiSH7にも秘密にしてほしいって言われてるんだけど…大和さんだからいいかな…』
Reyとしてのボーカル曲のSTARTのショートバージョンはすでに発表済みで、Schatzはデビュー時に発表予定だ。
Schatzは女性キーの曲だし、性別の公開に当たっての曲だから…。
『近くにいるのに伝えられない 伝えたら離れていきそうで』
私はアカペラでサビの部分を歌う。
女性キーを聴くのが初めての大和さんはどう思うだろう。
『っと、こんな感じなんだけど…』
「………」
大和さんが黙ってしまった。
そんなに酷かったのかな……。
「…綺麗だ」
『え』
「あ、いや、感情移入出来ててすごく良いと思った…」
『大和さんどうかした?』
「………自信持っていいぞ。俺が保証する」
『あ、ありがと…』
なんだか照れ臭いけど…大和さんに良いって言われたのが凄く嬉しい。
けど…言った本人が顔隠してるってどういう事だろう。
『大和さん?』
「よ、用事思い出した。またな!」
そのまま逃げる様にレッスン室から出て行く大和さん。
なんか…心なしか顔が赤かったような…?
『気にしてもしょうがないか…記者会見まで日にちないし練習だけはしなきゃ』