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アイナナ夢

第27章 Rey21



歌を馬鹿にされて影で泣いていた私。
それに手を差し伸べてくれる人なんていなかったし、誰も何も言ってくれなかった。
何か言ってあげたい。同情とか、そんなんじゃないけど。

「あなたと私は違う」
『だったら逃げないで』
「…っ」

私は思わず一織の腕を掴んだ。
振り切ればいいのに一織はそうはしなかった。

「一織、一織…!」

三月さんの声だ。
みんなで一織を探していたようだ。

「馬鹿!何逃げてんだよ!」
「…っ、離してください!」

メンバーに気付いた一織が私の腕を振り切ろうとする。
でもその力は弱々しい。私は掴んだ腕を離した。

「わ…、私のせいで、あんなことに…。…っ、あなたたちに合わせる顔がありません…ごめんなさい…」
「一織さんのせいじゃありません…。現場が混乱することを予測して私が十分な準備をするべきでした!本当に、ごめん、なさい…ひっく」

一織と紡さんが泣き出してしまった。
正直、泣きたくなるのはわかる。
あんな場面で見せ場を作れなかったんだから。

「な、泣くなよ…一織も、マネージャーも…泣いたって、しょうがねえんだから…」

それにつられる様にメンバーの目には涙が。
でも、ナギさんだけは違った。

「OK…ワタシ、踊ります。みなさんの好きな歌、歌います。なにがいいですか?」
「なに言ってるんだよ」
「OH、ワタシ、アイドルです。人を笑顔にするのが仕事…うーん。誰か手伝ってくれるといいですけど。OH、ガール」
「わ、私…?」
「YES、カモン」
『行ってきなよ』

私はそう言って紡さんの背中を押した。
バランスを崩しながらもナギさんが紡さんを受け止めた。
私は邪魔をしない様に一歩引く。

「今夜は舞踏会…星空の下で、あなただけの王子様になります。ダンス、ウィズ、ミー?」
「わ、私…踊ったことなんか…」
「OH…ソーリー。ここにいる音楽家たちは気が利かないです。せっかくのダンスパーティーなのに。プリーズミュージック!」
「あ…」

私は歌う気にはなれなかった。
歌ってあげたいという気持ちはある。でも私はメンバーじゃないんだから。

「OH、返事がない。もう一度あなたからおねだりしてみて」
『…必要なのは切っ掛けと言葉だよ』

私がそうだったみたいに。
こんなところで潰れて欲しくなんてないんだから。

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