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アイナナ夢

第27章 Rey21



「互いにカバーしようとして被ったな」
「被ってもいいんだよ。他に譲ろうとして全員が引いた。悲惨な無音時間を長引かせた」
「ダンスもグダグダだな…あの水色の子も動揺してる」
『いつもはこんなこと…はっ!まさか…』

陸の方を見ると顔色が良くない。
もしかして発作を起こしかけてる…?
なんとか踊ってはいるけど、ワンテンポ遅い。

「どうした?」
『陸…』

不味い。もうすぐ陸のソロパートだ。
このままいけば声量も…。

「…なんでいつもの声量の半分も出してねえんだよ!野外ではあんだけ出てただろうが!」
「……」
「天、どこに行く」
「もう見る価値なんてないでしょ」
「あぁ…全員の動きが重くなって来た。いいグループなのにな…」

TRIGGERの言う通りで、私も辛くなって来た。
私がたまたま上手くいっただけだったのかも知れない。
見せ場がないまま曲が終わって行く。
そんな私に気付いたのか、楽が私の肩を叩いた。

「お前が気にすることじゃない。あいつらがまだ早かっただけだ」
『…っ、そんな…割り切れるわけ…』
「……俺たちをしっかり見とけ」

TRIGGERとIDOLiSH7が入れ替わる。
顔を伏せて歩くIDOLiSH7に対し、堂々としたTRIGGER。
差は歴然だった。

『悔しい…本当はもっと凄いのに…』

私の口から出た言葉はIDOLiSH7のメンバーに突き刺さったかも知れない。
自分のことではないけど、同じ事務所だ。
本当は凄いんだって知ってもらいたい。
でも…私はどうすればいい?
会話がないまま楽屋に戻るメンバーただ見ることしかできなかった。

『一織…?』

私に気付いていないのか、そのまま1人で出て行く。
こんな状態で一織を一人になんて出来ない。
そのままついて行くことにした。

しばらく歩くと、大きなドームが見えて来た。
ここ…ゼロアリーナだ。

「いつまで付いてくるつもりですか」
『一織が止まるまで』
「あなた馬鹿ですか」
『知ってる』

そう言った一織が漸く足を止めた。
でも振り向くことはなかった。
表情は分からないけど、声が震えている。

「あなたは自分の心配だけしていればいいんです」
『……嫌だ』
「………」
『今の一織…昔の私みたいだから…』

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