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アイナナ夢

第25章 Rey19


19

社長に露出を増やすと言われて1週間が経過した。
インディーズでCDすら出していない私は、駅前で路上ライブが主流となった。
新しい曲を一つもらい、それをミュージックフェスタで歌うことになっていた。

『性別:Reyって何…』

場数を増やしたおかげか、人前で歌うことに抵抗がなくなって来ていた。
でも初日はとにかく酷いものだった。
顔を出した瞬間、声が出なくなったし。
台風の日にいたと思われるお客さんがガッカリしているのも見たし、不審がる人もいた。

『この調子なら普通に歌えそう…』

3日、4日と繰り返すとそれも変わっていった。
初日から見てくれていた人が拍手をしてくれるようになったり、舌打ちする音も聞こえなくなった。

「性別不詳の路上アイドルね…」

機材の片付けをしていると、聞き覚えのある声に気がついた。
眼鏡と帽子をかぶっていたけど…どう見ても楽だった。

『笑いに来たの?』
「そんな訳ないだろ。場所変えられるか?」
『片付けが終わったらでいいなら』
「分かった。近くに車停めてあるから来いよ」

片付けも終わり、楽の言う車へと向かう。
機材は…持ってくしかないよね。

「荷物後ろに積んでいいぞ。送ってやる」
『そんなの悪いからいい』
「いいから乗れ」

会うのも久しぶりだし、電話もラビチャもしなかったから渋々後部座席に乗った。
助手席に乗るような度胸はない。

「後ろかよ」
『変な噂立ったら困るし』
「俺は別に構わねえよ」
『私が困る』

ミューフェス前にゴシップに捕まったりなんかしたら私はともかく、TRIGGERに傷が付くって自覚がないのか。
歌う時に一応性別には触れないようにしているけど、少し調べれば分かってしまう事だ。
そんなことを思っていると車が動き出した。

「お前が本気みたいだからアイドルを辞めろとはもう言わない。けどな…何かあったらすぐに俺のところに来いよ」
『行かない』
「は…?なんで」
『事務所が違うし、楽に頼りたくないから…』

事務所同士の問題に発展しかねないし、楽に迷惑をかけたくない。
と言うのが本音だった。

「そんなに頼りねえのかよ」
『そうじゃない…私は1人で出来るところまでやりたい』
「そんなんじゃ上は目指せない」

楽が運転しながら冷めた声で呟く。
呆れられたのかも知れない。

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