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アイナナ夢

第20章 Rey15



その着信は未登録の携帯の番号だった。
イタズラ電話にしては着信が長い。
もしかしたら知り合いかも知れない。
私は事務所の廊下に出ると、通話をタップする。

《やっと出やがったな!?》
『え、もしかして…楽?どうして私の番号知って』
《そんなことよりなんだよあの動画!》

興奮しているのか声が大きい。
この状態で誰かに会ったら困る。
仕方ない。レッスン室に移動しよう。

『あの動画って…?』

楽がライブ動画を見てしまったのかどうかは分からない。
見たとしても私だってすぐわかるものなのだろうか?

《あのライブ…お前だろ》
『どうしてそう思うの』

逆に聞き出そう。
理由がなければ話にならないんだから。

《お前が事務所に就職したって時点で気付くべきだった》

一体何を言おうとしているんだろう。

《アイドルなんか目指すな》
『な…』
《お前にこの世界は耐えられない》

この時、私の中の何かが切れた。
そんなこと楽に言われたくない。

『負けない』
《零?》
『楽のこと絶対見返させる』
《俺の話聞いてたのか?》
『私から歌を奪おうとしないで』
《そんなつも…》

私はそのまま電話を切った。
なんとなく。周りに流されて。
きっかけはそうだった。
でも楽の言葉で目が覚めた。
怖がったり恥ずかしがってる場合じゃない。
意地でも楽を見返させたい。
そう思った。

『あの話…受けてみよう』

私は万理さんに言われたことを思い出していた。
そうと決まれば行動あるのみ…!
レッスン室を出て万理さんを探す。

「あぁ!いたいた」
『私も探してました』

私のことを探していたのか、万理さんがこちらに向かって来る。
急な用事でもあるのだろうか?

「IDOLiSH7の野外ライブが決定しましたよ!」
『野外…ライブ…ちゃんとした会場で歌えるんですね…いいなぁ…』
「その感じだと音無さんもやる気が出たのかな?」
『やる気…と言うか…その…万理さんが前に言ってた、高音の出し方を教えて欲しいんです』

高音…つまりは女性キーで歌う方法。
見返させるにはこれしかないと思った。
だって…私でさえ自分の声がどうなるかがわからないのだから。
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