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アイナナ夢

第17章 Rey13




「……ッ!」
『り、陸!?』

マズイ。呼吸困難を起こしかけてる。
無理矢理にでもステージから降ろさないと。

「音無さん!」
『待って!陸が…!』

一織に腕を捕まれ身動きが取れなくなる。
一刻も争うって言うのに…!
その腕を力強く引っ張られる。

「一度でいいです。歌って下さい」
『…な、なん…で』

突然意味のわからないことを言い出す。
私が歌う…?どうして?これはIDOLiSH7の路上ライブだ。
無名の私が出ていい場所じゃない。
それに…この人の多さじゃ…。

「私たちのライブを見て何も思わなかったんですか!?」
『歌い…たい…って思った…』
「ならこれを着てください」

渡されたのは黒いレインコート。
もしかして最初からこのつもりで…?

「フードを深く被れば顔も見えません。行ってください」
『え、でも…』
「マネージャー」
「ほ、本当にいいんですか!?」
「もしもの時は私も頭を下げます。このぐらいしないと…彼は…」
「わ、わかりました…Reyさん、音源は心配ありません。ステージに行ってください」

紡さんの合図でIDOLiSH7ではなく、私の曲のイントロが流れ出す。
もう後には引けない。私はレインコートを深く被りステージに立つ……!

「この曲…お前さん何やってんだ!」

初めて聴く曲に足を止める電車待ちのお客さん。
もう…怖がってる場合じゃない。

『ーーーーッ!〜〜♪』

声が、出てる。これなら……イケる。
私には歌しか武器がない。
ダンスも表現も全然出来ない。
でも……広い場所で歌うのがこんなに楽しいなんて知らなかった。

「これ…もしかしてReyなのか?」
「フード邪魔です」
「こんな力強い声の持ち主なんですね」
「悔しいけどかっこいい」
「やっぱり歌えるじゃないですか…必要だったのはきっかけでしたね…」

一曲歌い終えると、すべて出し切ったような脱力感。
足がもつれて倒れそうになるのをなんとか堪える。
足が生まれたての子鹿みたいだ。

『ぁ…』
「おっと」

倒れかけて後ろから支えられるような感覚。
そこにいたのは大和さんだった。
周りからは「え、誰?」「すごい歌唱力…」「アイドル…?」と声が聞こえる。

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