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アイナナ夢

第15章 Rey11




「無反応かよ」
『え、だって…何言ってるの?』
「で、返事は?」
『そんなこと急に言われても…』
「はぁ…」

楽が近づいたと思えば、私の前髪を上げた。
そのあとリップ音が耳に残った。

『い、今何を…』
「キスに決まってんだろ。本当は口にしたかったけどな」

しれっと答えた楽だったが、私はそれどころじゃなかった。
口ではなく、頬に近かったが。
パンッと乾いた音が響く。
我に帰った私は楽の頬を引っ叩いていた。

「ってぇ!」
『今のこと忘れてあげるからふざけないで!』
「お前なぁ…アイドルの顔に傷付ける意味わかってるのか?」
『あ…』

私は別の事務所の商品に傷を付けた。
それだけで大問題だと言うのに…。

「この程度どうってことないけどな。で、何?他に好きなやつでもいる?」
『……そんな人、いない』
「俺はてっきり…あ、いや、何でもない」

楽が何かを言いかけて黙ってしまう。
急にどうしたんだろう。
前に会った時まではこんなこと無かったはずだ。

「今日のところは帰るけど、諦めたわけじゃないからな」
『……』
「じゃあな」
『………じゃあね』

楽が出て行ったのを確信して、私は鏡のある脱衣所で自分の顔を見た。
大和さんに言われた通り酷い顔だ。
目の周りが真っ赤で、楽に心配されるのも当然かも知れない。

『冷やさないと』

冷凍庫からアイスノンを取り出し、目に当てるとそのままベッドへダイブする。
私を気にしてくれる大和さんとずっと見ていたと言う楽。
こんな私をどうして気遣ってくれるのかがどうしても分からない。
そもそも、楽が私を好きだと言ってくれる理由が分からない。

『もう頭の中グチャグチャ…』

明日には頭切り替えて事務所…行かなきゃ…。
私はそのまま眠りに落ちてしまった。



◇◇◇



翌日、私は早速鏡を見た。
目の周りの腫れは引いたらしく、気にする程度ではないみたい。
ひと通り準備を終えるとそのまま家を出る。
Reyではなく、音無零として。

『……あれ?』

家近くの交差点に誰かがいる。
帽子を深くかぶっているのか顔はよく見えないけど……

『大和…さん…?』
「おはよ」
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