第35章 Rey26
26
怒涛の1日がそろそろ終わろうとしている。
デビュー当日ってこんなに忙しいのってくらい。
CDショップのイベントの後、ハシゴで5、6件回ったと思う。
私って求められてるのかなって思ってしまったり…CDを買ってもらうよりも先に名前と顔を覚えてもらわないとどうにもならないし…。
ヘトヘトになりながら家までたどり着いた。
『…今から楽に電話したら迷惑かな』
すでに夜の10時過ぎだし、楽のスケジュールなんて知らない。
休みなんて不定期なのによくも私は楽に会えてたななーんて…相手はアイドルなのに。
休んでたら悪いからとりあえずラビチャしよう。
電話するかどうかはそのあと決めればいい。
【今家に着いた。楽は今何してる?忙しいなら別に返事しなくていいから】
『これでよし』
ラビチャを送ってすぐに返事が来た。
思いの外早くてどうしたんだろう。
【今家でくつろいでた。電話していいか?】
【邪魔じゃないならいいよ】
返事をすると着信が入る。
流石に電話帳に登録しないのが可哀想になって来てあの後登録したんだけど。
『もしもし』
《お疲れ》
『そっちこそお疲れ様。休んでたんでしょ?私邪魔してない?』
《邪魔なんかじゃねえよ。俺がしたくて電話してんだから》
世の女の子が聞いたら喜びそうな言葉を発する楽。
これだから抱かれたい男No.1なのかな。
『昼間はごめん。大和さんが大人気ないばっかりに…』
《謝んなよ。悪いのは二階堂だろ》
『同い年なんだからちょっとは楽を見習って欲しいよ』
《なぁ、今から会いに行っていいか?》
『こんな時間に?』
こんな時間に異性なんて家に入れたことがないから緊張する。
この前の大和さんの場合は例外だけど…。
《ちゃんと会って話がしたいだけだ。ダメか?》
『…わかった。でもちゃんと変装してきて』
《当然だろ。すぐ行くから待ってろ》
そう言って楽が電話を切った。
こっちにきたら日が変わっちゃうんじゃないかって思うけど…。
◇◇◇
電話から30分もしないうちに家の呼び鈴が鳴った。
一応夜はすぐには出ない様にはしてるけど…。
「零いるんだろ?」
外から楽の声がする。確認には十分だった。
私は鍵を外してドアを開ける。