第5章 真選組
****
銀さんを部屋に案内すると、なぜか肩をガックリと落とされた。
まぁ、そうだよね。
休むために私の部屋に来てもらったのに、ごみ袋に囲まれて寝るのはさすがに嫌だろう。
隅には並べてあるとはいえ、大量のごみ袋が近くにあるというのも、気分が良いものではない。
「あの、すみません銀さん。やっぱり違うお部屋にご案内します。ここじゃ、お休みになれませんよね?」
「いやいや、大丈夫大丈夫!!むしろここがいいから!」
銀さんはアハハハハと空笑いしながら、何気なく積まれた雑誌に手を伸ばした。
ジャンプ。
サンデー。
サンデー。
サンデー。
「なんでここ、サンデーばっかなの?」
「さぁ……?真選組の誰かが、サンデー推しなんじゃないですかね?」
「サンデーなんざ、邪道だ!邪道!」
そう言いながら、雑誌の山を崩していく銀さん。
サンデー。
ジャンプ。
サンデー。
……R18雑誌。
銀さんは目をパチクリさせると、雑誌を摘まみ上げる。
「お嬢さん、これは……?」
「あぁ。それはエロ本です」
「いやいやいや、そうじゃなくて!!」
銀さんは戸惑っている様子。
その雑誌がどうかしたのだろうか。
「銀さん……?」
銀さんはふっと短い息を吐くと、私に尋ねた。
「こういうの、平気なの?」
「へ?」
「いや、なんつーかその……。
男がこういう雑誌を読んでるのって、平気なの?」
「えっと……?」
銀さんは何を言ってるのだろうか。
誰が何の雑誌を読もうが、それは個人の自由なのではないか。
質問の意図が掴めず、きょとんとしていると、銀さんは長い長い溜め息を吐いた。
「なるほど。鈍感系女子なのね」
「鈍感系……?」
何に対して『鈍感』と言われているのか。
頭の中は、クエスチョンマークだらけだ。
「まぁいいや」
……諦められた。
まだ頭の中のクエスチョンマークは解消されていないのに。
だが銀さんに尋ねると、また溜め息を吐かれそうだ。
仕方ない。
山崎さんか、土方さんあたりにでも聞いてみよう。
「そういや、お嬢さん」
「はい?」
「明石紗奈さんって、知ってる?」
ん……?
「今、何とおっしゃいましたか?」
「明石紗奈さん」