第5章 真選組
「あの、坂田さん。ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げ、礼を言う。
「礼を言われるような事はしてねェけど……、まぁいいか」
少し照れたように、頬を掻く。
「それよりさ、銀さんって呼んでくれねェ?」
「銀さん、ですか」
「そっちのが何か、呼ばれ慣れてるから」
「分かりました、銀さん」
銀さんは優しく微笑んでくれた。
さっきの恐怖感と震えはどこへ行ったのか。
今は胸が温かい。
いつの間にか、私も銀さんに微笑みかけていた。
「あ、銀さん。そういえば真選組に何か御用があったのですか……?」
銀さんが真選組の屯所にいることを、今になって不思議に思う。
「あー……。真選組のゴリラさんについて、苦情を言いに来たんだけどよ」
「近藤さんのことですか?」
「そそ。今、お宅の山崎君が迎えに来てんだけど……なかなか帰ってくれなくてさ」
銀さんは迷惑そうに、眉をひそめた。
「山崎君じゃ駄目なら、大串君に持って帰ってもらおうと思って。苦情のついでに来たっつーだけよ」
「誰の苦情を言いに来たって?」
タイミング良く、土方さんが現れた。
「何、大串君。盗み聞き?趣味悪いー」
「うるせェ。てか、いつまで大串君呼ばわりする気だテメェは!この腐れ天パ!」
「んだとゴルァ?
もう一回言ってみろやァァァァ!!」
銀さんと土方さんは睨み合うと、お互いに罵詈雑言を浴びせた。
「テメェ、女泣かしてるくせに偉そうにほざいてんじゃねェ!!」
「こちとら事情があんだよ!テメェこそ、従業員にきちんと給料払えや!!」
「こっちにも事情があんだよ!」
「どんな事情だァァァァァ!!!」
「うるせェェェェェェ!!!」
会話になっているのか、いないのか。
売り言葉に買い言葉で、喧嘩はますます熱を帯びる。