第5章 真選組
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私が部屋を出てすぐに、山崎さんはフィギュアを抱えてどこかへ行かれた。
きっと持ち主に返しに行くんだろう。
なぜ、女中部屋に置かれていたのか。
持ち主は誰なのか。
多少は気になった。
だが山崎さんの慌て様を見たところ、持ち主は、フィギュアの所持を隠していたのかもしれない。
私にも、知られたくないはずだ。
私が向かうべき場所は井戸で、フィギュアの持ち主の居場所ではない。
『中庭に出たら、井戸がある』
山崎さんの言葉を手掛かりに、とりあえず中庭に出てみた。
だが、肝心の井戸が見つからない。
すれ違った隊士さんに声をかけると、なぜか逃げられてしまった。
山崎さんに着いて来てもらえばよかったかな……。
少し後悔しながら、とぼとぼと歩いていると
「何してんでィ」
救世主に出会った。
サボっていたところに、たまたま私が鉢合わせしただけのだろうが。
「沖田さん!沖田さん、沖田さん!」
「何でィ。やかましい」
「あ、すみません……」
私が大人しくなると、
「アンタ、本当に女中になったのかィ?」
意外だねィ、と沖田さんが言った。
「そうですか?」
「真選組はあまりいい噂が流れていないからねィ」
その原因のほとんどが、沖田さんにあるような気がするのですが。
「で、アンタは何してたんでィ?」
「あ、そうでした。井戸を探しているんですが……、場所を教えて下さいませんか?」
「井戸ねィ……」
沖田さんは少し黙った後、ニヤリと笑った。
「いいぜィ。連れてってやらァ」
嫌な予感しかしないが、今は仕方ない。
山崎さんを待たせるわけにもいかないし、私が早く戻らないと、片付けも進まないのだ。
藁にもすがる思いで、沖田さんに着いて行くことを決めた。
井戸は、案外私の場所の近くにあった。
それなりに大きな、立派な井戸。
どうして今まで気がつかなかったんだろう……。
「沖田さん、ありがとうございます」
お礼を言うと、沖田さんはいつの間にか私の背後に立っていた。
そして。
沖田さんが私の頭を押さえつけた。
頭がぐっと重たくなる。
「!?」
ざぷん、という音と共に、目が開けられなくなる。
沖田さんが私の顔を、井戸の中に沈ませたのだ。