第5章 真選組
山崎は俺の言葉を信じたくないというように、頭をぶんぶん振る。
山崎は、明石を疑っていないのだ。
「山崎。明石は要注意人物だ」
「まだ決まったわけではありません……!」
「あぁ、だから注意してもらう必要がある。山崎、お前も例外じゃない」
「俺は明石さんを信じています」
山崎は真っ直ぐ、俺を見つめた。
「攘夷志士と繋がりがあるのなら、女中になんてならないでしょう?内部から壊すにしたって、こんな疑われるようなことはしないはずです」
山崎の言い分は最もだ。
単に、俺が勝手に明石を疑いの目で見ているだけなのかもしれない。
だが、明石紗奈の素性が分からない以上、シロクロとはっきりさせるのは難しい。
「もし攘夷志士と繋がっていた場合、明石さんはどうなるんですか?」
「拷問して、繋がりのある攘夷浪士共について吐かせる」
明石紗奈が攘夷志士と繋がりがあるなら。
真選組に長く留めて置くわけにはいかない。
内部から瓦解されたら、真選組は崩壊を免れないだろう。
「山崎。近藤さんを探して来てくれ」
「え、でも昨日の取り調べから姿を見てませんよ」
「あの人の行く場所なんざ、限られているだろ。俺は総悟を探しに行って来る」
「あ、はい。分かりました」
山崎は今度こそ、部屋から出て行った。
「はぁ………」
もう何度目かも分からない溜め息。
とりあえず、近藤さんには明石のことを伝えなくてはいけない。
要注意人物だ、ということも含めて。
総悟には公園での明石紗奈について、詳しく話してもらう必要がある。
「はぁ………」
また溜め息を一つ吐く。
そして、新しい煙草をくわえると、総悟を探すために部屋を出た。