第5章 真選組
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俺は書類に向かいながら、煙草の煙と共に、何度も溜め息を吐いていた。
原因は、明石紗奈だ。
攘夷活動が横行しているこの時期に、厄介な奴を連れ込んでしまったことに後悔していた。
「はぁ………」
俺は再び、溜め息を吐く。
煙草の吸殻も、徐々に山のようになっていた。
二箱目の煙草に手を伸ばそうとすると、
「副長、山崎です」
いつもの声が、襖の外から聞こえた。
「入れ」
「失礼します」
「あぁ。どうした……って山崎、何持って来たんだ?」
山崎の腕には、大量の箱が抱かれていた。
「恐らく、副長が妖刀に精神を乗っとられていた時のものかと」
山崎はそう言って、箱を見せる。
箱の中身はフィギュアだった。
「まだあったのか、それ……」
妖刀によって、俺はアニメオタクの『トッシー』へと変貌してしまったことがある。
そのトッシーの遺品がまだ残っていたらしい。
「どうしますか?」
「どうするも何も……。捨てるしかないだろ。どこにあったんだ?」
「女中部屋です。明石さんが発見しまして……」
明石に見つけられたのか。
「明石に何も言ってないだろうな?」
「はい」
もし明石に何かを教えていれば、山崎に制裁を下そうと思っていたのだが。
山崎の表情を見た限りでは、どうやら心配はいらないようだ。
「なら、捨てておけ。もうトッシーに憑かれることもないだろ」
「いいんですか……?」
「欲しいなら、貰ってくれ」
俺にとって、アニメやフィギュアは忌々しいものでしかない。
あの数日間は、本当に散々だった。
「分かりました、処分しておきます」
「頼んだ」
失礼しました、と言って部屋を出ようとする山崎を、俺は呼び止めた。
明石に対してどう考えているのか、聞きたかったからだ。
「明石紗奈はクロだと思うか?」
しばらく迷った後、山崎は
「……思いません」
はっきり言った。
「桂と一緒にいただけでしょう?」
「いや、まだシロとは確定できない。
総悟に明石の跡を着けさせたんだが……
アイツの住んでいた公園は、攘夷浪士の巣窟とも呼ばれている場所だった」
「まさか……!」
「アイツが攘夷浪士と繋がっている可能性は、大いにある」