第5章 真選組
そして土方さんは山崎さんの方に向き直った。
「コイツの部屋、案内してやれ」
「はい」
返事をした山崎さんと副長室を出た。
「私の部屋って、もうあるんですか……?」
気が早すぎるのではないか。
もし私が真選組女中を断れば、その部屋はどうなっていたんだろう。
「元女中部屋だよ。でも長い間、住み込みで働いている女中さんがいないから部屋が余ってて……」
「女中部屋なんてあったんですね。」
「うん。三人部屋だからちょっと広いよ。置いてある家具とかは自由に使っていいからね」
なんと!家具まであるのか!
優良物件すぎる女中部屋に、ワクワクしてきた。
「楽しみです。私の新しい部屋♪」
「アハハ……。あまり期待しないでね。あ、ここだ」
山崎さんはそう言って、部屋の襖を開いた。
「……ここ、ですか」
確かに広い部屋だった。
ただ、長い間女中がいなかったせいだろうか。
床には乱雑に少年ジャンプ、サンデーが置かれ、
R18な雑誌が広げてある。
酒瓶やらビール缶もあちこちに転がり、まさに汚部屋であった。
「……………」
「ご、ごめんね。しばらく空き部屋だったから野郎共の巣窟になってて……」
住まわせてもらう以上、文句は言わないつもりだったのだけれど……。
これはひどい。
部屋を見渡すと、気になるものが目に留まった。
「フィギュア?」
部屋に設置された棚には、箱に入ったフィギュアがあった。
……何体も。
セクシーな洋服を着て、ポーズをとっている。
箱に入れているということは、相当大事に保管している証拠だ。
「山崎さん。あの、これは誰かの私物ですか?」
「ん?どれ?」
「これです」
フィギュアを見せると、山崎さんの顔が真っ青になった。
「そ、それは……」
「あ、もしかして山崎さんのでしたか?ごめんなさい、勝手に触っちゃって……」
「違う!違うよ!」
山崎さんは慌てて私からフィギュアを奪い、棚に戻す。
「あ、」
「大丈夫だよ!俺がちゃんと持ち主に返しておくから!」
「え?……あぁ、はい」
「とりあえず、部屋の片付けをしよう?俺も手伝うよ」
何だか、山崎さんに誤魔化されたような気が……。
まぁ、いいか。
私は考えることより、部屋の片付けを優先した。