第4章 公園
「お前は何故桂と一緒にいた?」
「歌舞伎町の案内をしていただきました。まぁ……途中だったんですけどね」
結局、ジェットコースターには乗れなかった。
楽しみにしていたのに。
少し皮肉げに言うと、土方さんは眉をひそめた。
「なら、お前は歌舞伎町のもんじゃねぇのか?」
「はい。昨日初めて来ました」
「……天人か?」
「まぁ外来種といや、外来種ですが……人間ですよ」
「歌舞伎町へは何をしに?」
「気がついたら、歌舞伎町にいました」
「家はどこにあるんだ?それとも、どこかで寝泊まりしてんのか?」
「……寝泊まりという方が正解ですね。まぁ、他の利用者さんもいらっしゃいますけど」
いかにも胡散臭い答えだと自分でも感じる。
けれど、土方さんはその曖昧な答えが分かってしまったようだ。
「公園か」
「うっ……」
土方さんの鋭い視線に気圧されて、頷いてしまう。
「いつここに来たかも分からず、行き先もなかったため、公園にいるということか」
「その通りです」
土方さんは、盛大に溜め息を吐いた。
時間の無駄だった、とでも言うように。
勝手に捕らえておいてその態度は如何なものか。
私が不服そうな顔をしていると、隣から沖田さんの声がかかった。
「なら真選組の女中になりやせんか?」
彼は何を考えているのだろう。
さすがの土方さんも目を丸くしていた。
「ちょうど若い女中が欲しかったんでさァ。ここなら、住み込みで働けますしねィ」
「おい、総悟!何を考えて……」
「明日真選組に来てくだせェ」
沖田さんは強引に約束を取り付けると、取り調べ室を出て行った。
「おい待て、総悟!」
土方さんも沖田さんを追いかける。
取り調べ室には、私一人だけが取り残された。
……これは、帰ってよろしいのだろうか。
しばらくすると山崎さんが迎えに来て、屯所の玄関先まで見送ってくれた。
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「おい総悟!何を考えているんだ」
「監視のためでさァ。真選組に害を為すなら、斬ればいい」
総悟はニヤリ、と不敵な笑みを浮かべた。
「アイツの監視はアンタに任せまさァ。何かあれば土方さんが腹を切って下せィ」
「総悟。お前……」
総拳骨を見舞おうと腕を振り上げた時には、すでに総悟は逃げ出していた。
「総悟ォォォォォ!!!」